小笠原諸島の医療事情 〜世界遺産の島で、インフルエンザになったら〜

夏野葉月@natunohazukiです。
10月20日に沖縄県宮古島市で行われる日本島嶼学会宮古島大会で発表するために、島を旅立ってから12日目。
11月1日に無事に島に帰ってきました!
ただし、インフルエンザに罹患して。
この記事は世界遺産に指定された日本で一番遠い離島の医療事情かつ極めて私的な闘病日記です。

0:毎年11月1日・2日・3日は小笠原村大神山神社例大祭

そもそもせっかく内地に旅行に行ったのに急いで帰ってきたのは、理由があります。
毎年11月1日から3日は小笠原村父島の大村地区にある大神山神社で例大祭が行われるんです。
1日は子どもの奉納相撲。
2日は大人の奉納相撲。
3日昼はご神事と神輿の巡幸があり、夜は島の紅白歌合戦とも言える演芸大会があります。
私は2015年に大神山神社例大祭を取材して以来、島の秋祭りの時期に不在にしていて、今年の撮影を本当に楽しみにしていました。
そのために、宮古島旅行も東京滞在も早めに切り上げて、帰ってきたのです。

それなのに。

インフルエンザ。

………オーマイガー!!!

ええ、変だと思ったんですよ、奥さん。
11月1日に島に帰ってきて、いきなり喉が痛いんですもの。
「おかしいな、風邪かな?」と思った翌日2日に、微熱発生。
いつもどんなに風邪を引いても熱の出ない私が、微熱。
36.9度まで上がっても、37度の壁を越えられないために、何度風邪を引いても休めない苦渋の涙を飲んだ小学校時代を思い出します。
そんな私が、37.6度。
2019年11月2日。それは土曜日。
当然、島の診療所は休診日です。

前振り終了。

では、世界遺産の島でインフルエンザになったらどうなる?講座はじまります。

1:小笠原諸島の医療体制とは

小笠原村には父島と母島という有人島が2つあります。
そして村経営の診療所が父島母島にあり、父島には3名の医師が、母島には1名の医師が勤務しています。
父島には民間の歯科医院が1軒、接骨院が1軒あります。
ですが、それ以外の民間の病院やクリニックはありません。
基本的に病気や怪我をしたら、村の診療所にかかります。
村の診療所は東京都立広尾病院と連携していて、勤務医は東京都立所属の医師が派遣されます。
勤務医は内科医ですが、総合医に近い存在で、病気でも怪我でもなんでも診ます。
耳鼻科医や産婦人科医や小児科医といった専門医は年に1〜2回の派遣を待たなけれはなりません。
それ以外に専門医に診てもらう必要がある慢性疾患のお持ちの方は、週1回東京都竹芝桟橋と父島を往復する定期船「おがさわら丸」で通院する必要があります。

2:小笠原で急患になったら、119もしくは小笠原村役場に電話

では小笠原で突然病気や怪我をして、急患として医師に診てもらいたい場合はどうしたらいいのでしょうか?
小笠原に民間の消防団はありますが、消防署はありません。
つまり、内地なら救急車で駆けつけてくれる救急隊もいません。
では119にかけるとどこにつながるでしょうか。
答えは「小笠原村役場」です。
小笠原村役場には当直の職員がおり、119にかけると小笠原村役場にかかるようになっています。
診療所の開業時間外に受診を希望する人は村役場の当直職員に「どんな症状で困っているか」を電話で説明します。
村役場職員は電話の内容を診療所の看護師に連絡し、状況を聞いた看護師から折り返しの電話があります。
そこで改めて病状や症状を看護師に伝え、看護師がその内容を医師に伝えます。
看護師に伝えた内容を聞いた医師が「急患として受診したほうがいい状態か」判断し、受診の必要が認められた場合、看護師と受診時間を相談し、来院します。

小笠原村診療所ホームページ

3:インフルエンザ検査 in 小笠原村父島診療所

まず、私は11月2日土曜に電話したのですが「島の診療所にあるインフルエンザ検査キットは、発熱後12時間以上経過しないと検査ができない」と説明を受けました。
このとき、私は「① 2日のみ受診」「② 3日のみ受診」「③ 2日と3日両日受診」の3パターンを想像しました。
①はただの風邪であれば1日の受診ですみます。②はインフルエンザなら受診せざるえません。本音を言えば③は避けたい。
ただ、今回いつもと症状や発熱の仕方が違いとても不安だったので、2日に受診してまずは普通の風邪薬(喉薬トランサミンと解熱剤カロナール)をもらって飲んで、様子を見ることにしました。

結果。

翌朝、11月3日。
熱が38.8度。

死ぬわー。

素直にもう一度、村役場にお電話し、看護師さんと話し、2日連続急患として受診。
2日間続けて診療所に送ってくれた友達に感謝、感謝です。
無事インフルエンザ検査受けられました。

医師「インフルエンザA型+です」

ありがとうございます。知ってました。
嬉しくない予想って当たりますね。
「薬は要りますか?」と聞かれて「要ります!」と即答。
タミフルを5日分もらいました。
私はインフルエンザA型にかかるのが人生で初めてで、タミフルも初めて処方されました。
そして、処方時にどんな薬か全く説明がありませんでした。
後で調べたら、結構ヤヴァい薬でびっくりしました。
処方するなら、ちゃんと説明して欲しかった。
この日は大人しく帰宅し、家で眠りました。
夕方、自宅前を大神山神社例大祭のお神輿とお囃子隊が通過していくのを、歯噛みしつつ。
よっぽどせめて家の中から撮ろうか悩んだのですが、病状が悪化したら哀しくなるので我慢しました。
夜、大神山神社から演芸大会の歌声が聴こえてきて、淋しさMAX。
お祭りのときに病気って、つらい。

4:世界遺産の島で、咳と痰で、愛を叫ぶ

11月4日月曜。タミフル2日目。
熱がなかなか下がらず、38度台を行ったり来たり。
食欲、ストロングゼロ。
咳と痰が酷くて、家の外まで聴こえるレベルらしい。
友達が生姜シロップと玄米スープを差し入れてくれる。

11月5日火曜。 タミフル3日目。
熱が少し下がる。37度台をあちらこちら。
食欲、出ない。
友達の差し入れてくれたポカリスエットとバナナとヨーグルトで生きる。

11月6日水曜。タミフル4日目。
熱が平熱っぽい感じになる。
食欲も少し回復して、野菜を食べる。
咳と痰がとにかく嵐みたいなのは変わらず。
流石に髪の不衛生さに耐えられなくなり、髪を洗う。
そろそろ、人と話したくなってくる。

11月7日木曜。タミフル最終日。
熱が平熱になる。
食欲がかなり回復して、料理ができるようになる。
咳と痰も少しずつ減ってくるが、逆に喉が痛くなってくる。
部屋着や下着の替えがなくなってきたので、7日ぶりに洗濯をする。
友達が買い物をしてくれ、食料を差し入れてくれる。

診療所の看護師さん曰く「インフルエンザは38度以上の発熱日を0日と計算します。5日経過後まで、できれば外出しないでくださいね」とのことで、11月8日明日まで、私の闘病生活は続く予定です。

早く外出したい!
海行きたい!
友達と話したーーーい!!!

5:まとめ 〜小笠原でインフルエンザにかからないために〜

私は10月31日に竹芝から乗ったおがさわら丸の中で感染したっぽいです。
おがさわら丸は外には出れますが、基本船内で過ごします。
ウィルス保菌者が乗船している可能性はありますし、体力が落ちた状態で乗れば感染する可能性もあります。
おがさわら丸は開放的で素晴らしい船です。
それでも、それだからこそ、日常の「うがい」「手洗い」「マスク着用」は大事にしましょう。
皆さんも良い秋をお過ごしくださいね。

おがさわら丸