『世界遺産』に認定された小笠原諸島の自然について知ろう

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 小笠原諸島は、東京都特別区の南方約1000キロに位置する30余りの島々で構成されています。
 特徴として気候が亜熱帯であること、大陸と陸続きとなったことがない海洋島であることから、非常に独特の地形と生態系を観察することができます。

1:小笠原の地形・地質

 小笠原諸島は、大陸形成の始まりとなるプレート同士のぶつかり合いと、その後の沈み込みを開始したことによって海洋地殻の上に誕生した海洋性島弧(かいようせいとうこ)です。
 約4800万年前に形成された父島列島と聟島列島、約4400万年前に形成された母島列島、噴火により新島が誕生したように現在も活動中の火山列島が並んでいます。
 こうした、プレート沈み込み帯における海洋性島弧の初期段階から現在に至る地質的な成長過程を、陸上に露出した岩石や地層の中に記録しており、小笠原ではいろいろな珍しい岩石・地形を見ることができます。

2:小笠原固有の生きもの

 小笠原諸島は、大陸と一度も陸続きになったことがありません。そのため、この諸島にたどり着いた生物は独自の進化を遂げてきました。
 そのため「固有種」と呼ばれる小笠原諸島にしかいない動植物の割合が多く、植物で 36%、昆虫類では 28%、陸産貝類では 94%にもなります。
 小笠原諸島で生息するムニンツツジやムニンボタンといった植物、オガサワラオオコオモリ、アカガシラカラスバトなど鳥類が国際自然保護連合の希少種リストに掲載されています。これら57種は絶滅危惧種であり、小笠原諸島は生物多様性を保持するためにも貴重な動植物の生息域となっています。

3:世界遺産区域

 小笠原諸島の中で世界遺産の区域となっている島は、北から聟島列島、父島列島、母島列島、火山列島のうち北硫黄島と南硫黄島、西之島です。父島・母島では、住宅地を含む集落地などを除いた陸域と、周辺の一部の海域が世界遺産の区域となっています。
 父島では、島の東部を中心に乾性低木林が広がっています。森では貴重な動植物が生息しています。南島では、扇池をはじめとする美しい景観やヒロベソカタマイマイの貝殻の化石を観ることができます。また母島の石門にある湿性高木林は、固有種を沢山観察することができます。

4:地域での取り組み

 小笠原諸島では、世界自然遺産に認定されるような豊かな自然があります。ですが人が居住することで小笠原以外のの土地から持ち込まれた「外来種」が、固有種に大きな影響を与え、その生態系に危機をもたらしています。
 外来種には野生化した野ヤギ、野ネコ、外国産のトカゲのグリーンアノールなどがいます。
 小笠原村では、島民を始め地元 NPO や環境省、林野庁、東京都と協力しあい、外来種の駆除の取組が行われています。
 小笠原を旅行する際は外来種を持ち込まないように、自然環境に配慮して観光したいですね。

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